懐かしいお菓子に囲まれる、やさしいひと時

懐かしいお菓子に囲まれる、やさしいひと時

フリーペーパーSTAR*10掲載記事より

備中高梁駅を降りて情緒のある商店街を通り抜けると、見えてくるのが「植田菓子店」。駄菓子屋だと思って入ってみると、実はそこは駄菓子屋より昔の”お菓子屋”だった。
暖簾をくぐると色とりどりのお菓子が出迎えてくれる。

植田菓子店1

●「駄菓子の店」と書かれた暖簾が懐かしさを感じさせる

「すみませーん」と一声かけると奥から店主の植田智恵子さんが出てこられた。幼少からお父様の手伝いをし、お父様の引退後にお店を継いだという植田さん。柔和な雰囲気でとても話しやすい方だった。
店内のお菓子は100gから販売しており、お菓子を選ぶと植田さん自らが掬って袋に入れてくれる。1袋ずつ秤に載せたあと、金額の計算はそろばんで。パチパチパチと小気味良い音が店内に響く。
創業時(1956年頃)には植田さんのお父様が店に立ち、せんべいをその場で焼いて販売されていたそうだ。

「当時は商店街のお店も数多く、通りでは子供が遊んで、その帰りにせんべいを買い求めにきたの。稲荷神社でのお祭りのときは参拝者で通りが大いに賑わっていたわ。」と懐かしそうに当時の思い出を語ってくれた。植田さんがお店を継いだ後、1982年に菓子棚を増やし、今の販売体系となったそうだ。
「昔は通りも人で賑わっていたのだけど、今は子供もお店も減ってしまったの。通学路も観光路はもう1本東の通りだし、店の前の道路は車も多いけれど来客は少ないのよね。」
確かに取材の際も、車やバイクの往来は多かったが徒歩は数えるほどしかいなかった。

取材をすすめていると、偶然にも広島から来たという観光客の方々が来店した。植田菓子店に来たのは初めてだというが「どこか懐かしい」「子どものころに食べたことがある」「このパッケージ、久々に見た」と和気あいあいとした雰囲気が店内に広がった。
こうしてふらりと訪れたお客様や地域の方からは「お店をこれからも続けてほしい」「店を守ってほしい」と言われるらしい。雑誌の取材の話も時折くるそうで、そうした生の反応を知り、植田さんは自身の店の大切さを改めて感じたそうだ。

お店の今後について尋ねてみると、「歳が歳だからしんどいときもあるけど、そういった声もあるし、私は80歳まで続けたいと思っています。」と笑顔で仰られた。

 

 

取材・写真 水子貴皓


植田菓子店

〒716-0034 岡山県高梁市東町1-889
TEL:0866-22-3294
営業時間:7~19時(不定休)
店舗の駐車場はないので、近くの駐車場より徒歩でお越しください。備中高梁駅から徒歩15分。