第1回まちなかワークショップに行ってきました!

第1回まちなかワークショップに行ってきました!

6月9日に倉敷で開催された「第1回まちなかワークショップ2018」に行ってきました!
「まちなかワークショップ」は、地元倉敷で暮らす人・仕事を営む人の体験談をとおして、まちの歴史や地域の生活文化を学ぶワークショップです。
今回は、「喫茶エル グレコ」のマスター・長沼 眞智子さんにお話を聞きました!

「長沼様の母・浦江様と大原家の深い関わり」

倉敷美観地区を入ったところ、大原美術館の横にある「喫茶エル グレコ」は昭和34年に開店してから今年で60周年を迎えました。建物を覆う蔦の緑は倉敷のまちに映え、店内は、まちを歩く観光客や美術館を訪ねた多くの人びとで賑わっています。


「喫茶エル グレコ」は、元々大原美術館の設立者である大原孫三郎の事務所で、大正末期に建てられました。その後、大原孫三郎の長男・大原總一郎から「大原美術館で絵を観た人々が休むための場所がほしい」という思いを受け、長沼様の母・浦江様が昭和34年に開店し、今に至ります。


STAR*編集部
Q.「 喫茶エル グレコ」が始まった経緯について教えてください。
ー私の母浦江は、実家の米屋が倒産したため、12歳ぐらいの頃から倉紡で働いており、そこから「二三会館」で働くようになりました。ある日、大原孫三郎氏のデスクに名も知れない野の花を飾った母を見て、孫三郎氏が「うらは花が好きじゃのう」といたく気に入ってくださり、母の「さりげないところからも美を見出すことの出来る才能」を認めてくださったのです。それからも、大原家のお茶席に母は携わり、大原家との関わりは深いものでした。そして、大原總一郎氏から「喫茶エル グレコ」をつくる計画のお話が母にきました。最初、母はお断りをしていたそうですが、何度も訪ねてくる大原家の大番頭に根負けし、「自分で経営をさせてもらえるなら」と条件付きで承諾しました。

「喫茶エル グレコ」が出来た昭和34年は、倉敷を訪れる人もまだまだ少なく、大原美術館も開設した当初は人の列ができていましたが、その時には入館数が0人という日があるほどでした。「喫茶エル グレコ」も人は少なかったですが、大原總一郎氏の紹介もあって、倉敷JC設立時メンバーの方々や、経営をされている方々が、よく来られていました。その後、昭和60年代にディスカバージャパンや新幹線が岡山まで開通した事、テレビ番組や雑誌で倉敷がとりあげられた事がきっかけで、観光客がたちまち増加し、「喫茶エル グレコ」も特集されたことから多くの観光客がお店に訪れるようになりました。そして、平成元年に私は母から「喫茶エル グレコ」を引き継ぎました。

ワークショップには地元大学生の方も参加されていました。

「倉敷は民間の動きからまちを保存する気風がうまれた特殊なまち」

STAR*編集部
長沼様は現在、「喫茶エル グレコ」のオーナー以外にも倉敷の景観や、都市計画に関わる様々な活動をされていますが、活動をされていく中で、「倉敷」についてどのようなお考えをお持ちですか?

喫茶エル グレコのオーナー、長沼様

ー倉敷に生まれて育って、色々な地方都市を回っていると、「倉敷は不自然なまち」に以前は感じていました。様々な年代形式の建物が雑多に建てられている地方都市は「まちが生きているな」と感じていたのですが、その点、倉敷は景観が整いすぎており、生きているように感じられなかったのです。ですが、様々な方からのお誘いで建築や都市計画の団体のなかで活動していくうちに、「倉敷は、人の意識によって守らないと歴史が続かないんじゃないか」と思うようになりました。この「喫茶エル グレコ」を包むツタもそうですが、一度枯れてしまうとそのツタは終わってしまうように、歴史も一度切断してしまうとその歴史は完全に途切れてしまう。ですから歴史的価値のある古いものや、良いと思ったものは保存していかないといけない、と思うようになりました。

倉敷は、外村氏や大原氏など民間の動きからまちを保存する気風が生まれ、その後、市がまちの保護へ動き出すようになった特殊なまちです。また、倉敷は元々町民のまち。自主独立、競争によって成長してきました。なので、個々で倉敷はどういうものか、何が必要かを考えていく方がこれまでの倉敷の気風にもあっていて良いのではないかと思っています。

STAR*編集部
ありがとうございました!


上写真|喫茶エル グレコの扉には、大原家の家紋「向かい松」がある
右写真|写真の右側の建物が、現「喫茶エル グレコ」(元「奨農土地株式会社」事務所)

取材協力 喫茶エル グレコ/取材 山口百香


喫茶エル グレコ

〒710-0046 岡山県倉敷市中央1丁目1-11
TEL:086-422-0297
営業時間:10~17時(月曜定休)
店舗の駐車場はないので、近くの駐車場より徒歩でお越しください。